あまりにもみゆきの具合が悪いので、今までも何度も言いかけて、ぐっとこらえていた一言を、ある日口に出してしまった。
「ギブしてもいいんだよ。長い人生1年や2年遅れても大丈夫。まずは病気を治してから、復学してもいいんじゃない?」
すると、娘は烈火のごとく怒った。
「お母さんには、私の気持ち、わかりっこない!」
そして、何かを吐き出すように大泣き、大暴れ。しまいには過呼吸になって、吐きそうになるほどに泣きじゃくる彼女。
頑張っている彼女に、私はなんてことを言ってしまったのだろう。
ごめん、ごめん、本当にごめん。
あなたの頑張りを一番近くで見ていたのに。
それからしばらくして、担任の先生から電話がかかってきた。
「今までの欠席16日、遅刻59日。」
「まだ卒業は見込めるのですか?どうすればいいのですか?」の問いに
「学校に来るしかない。」との答え。
でも具合が本当に悪くて行けないのだから、来るしかないと言われても、行けるときには行けるし、行けないときには行けないではないか・・・と悶々としていたら
次にみゆきが学校に行ったとき、具体的に担任から説明があったらしい。
英語はあと8回授業があるから、そのうちの6回は必ず出席するように。
木曜日は最悪休んでも大丈夫。
それ以外の曜日はこの先ずっと1限目から出席しなくてはならない。
この具体的な指示が、娘には救いの言葉となった。
海でおぼれた時、
岸が見えず、あと何キロ泳げば助かるのかが全く分からなければ、
絶望するだろう。
しかし、あと何キロ泳げば岸にたどり着けるかを知っていたら
それがいかに大変でも、希望を持って泳ぎ続けられる。
これが分かってから、みゆきは、しばらくやめていたメトリジンを飲み始めた。目標ができたのだ。この時のメトリジンは効いたように思う。
具体的目標あってのメトリジンだったのだ。
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