私からの手紙で、みゆきの病気を知った父。父が壊れた理由は、みゆきのことを深く心配したからという単純な理由ではないと思っている。かわいがっていた孫の病気は、確かに父を悲しませ、心配させたには違いない。だが、私は父の心の傷をもっともっと深くえぐってしまったのだ。
実は、私には6歳下の弟がいて、彼も小学生時代から学校に行き辛さを抱えていた一人だった。六歳も年が離れているので、彼の中学、高校時代のことはよくわからない。だが、彼が重い喘息患者だったという以外にも、学校へ行けなかった理由があるのではないかと思っている。もしかしたら、彼もODだったのかもしれないと、ODのことが書かれた書籍を読んで、父は悟ったのかもしれない。そしてそれに気付いてやれなかった自分自身を深く責めたのだ。インターネットも普及していなかったこの時代、かかりつけの医師ですら、ODのことはわからなかったはずである。父が気づかなくても当然なのに。
私が、父を壊したのは自分だと思っていることを誰にも言えなかったように、父も自分自身を責めていることを、きっと誰にも言えなかったに違いない。そして、父は壊れたのだ。古い父の傷を、計らずも抉ってしまったことを深く悔やんでいる。
パパ、
弟は、元気に大人になったよ。
彼が学校に行けなかった頃、パパが無理やり学校へ追いやったことなど、
彼はもう忘れているはず。恨んではいないよ。
辛い時期があったからこそ、彼はあんなにやさしい人になったんだと思うよ。
みゆきも、今は自分の好きな道に進めたよ。
彼女は、それは病気をしたおかげだと思っているよ。
ときどき、体調を壊すことはあるけれど、
もう大丈夫。自分でコントロールできるようになったよ。
どうか、昔のことを悔やまず、みゆきを心配せず、安らかに眠ってください。
どうか、古傷をえぐった私を許してください。