高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

角膜潰瘍発症後2か月

 角膜潰瘍を発症して2か月が過ぎた。ありがたいことに精神を参らせる激しい痛みはもう感じない。ただ視力が回復しない。粘膜を強くするというウナギも何度か食べてみた。ウナギを食べた数時間後は、気のせいか若干見えるようになる気がするが、次の日には元通り。こうして、何度も何度もウナギを食べて、少しずつ少しずつ治していくしかないのだろうか。

  視力が回復しないこと以外にも、悩ましいことが出て来た。それは持病のリウマチのこと。2020年から生物学的製剤の自己注射の治療を2週間に一度続けている。生物学的製剤とは、関節リウマチや乾癬などの自己免疫疾患の治療薬で、強い免疫抑制作用がある。暴走する自己免疫を抑制するので、痛みや関節の変形を防いでくれる、リウマチの世界では夢の救世薬。だが強い免疫抑制作用を発揮するということは、感染症にかかりやすくなるという致命的な副作用がある。コロナの蔓延するこの時期、特に注意が必要だ。感染症…というとコロナウイルスが怖いと感じて、できるだけ人込みは避けていたが、注意すべきはコロナだけではなかった。まさに角膜の感染症がそれだ。

 尿路結石の手術で、免疫が落ちていたところに、目の感染症。外科手術の前には、感染症リスクが高まるので、当然生物学的製剤は中止するが、中止すると今度は関節の痛みが再燃するのだ。手術から1ヵ月後、そろそろ感染症の危機が弱まったとして、ドクターと相談の上再開した生物学的製剤を注射。その直後、角膜感染症を発症した。

 目の痛みは関節の痛みよりも何倍も辛い。なので、目が完全に治るまで生物学的製剤は再開したくなかった。しかし、再開しないで1月もすると、関節が悲鳴を上げる。関節の痛みと目の痛みでは断然目の方が辛いと思っていたが、実のところ目の痛みが癒えてくると、関節の痛みが際立ってくるのだ。包丁を握る手の自由が利かないし、立ったり座ったりするだけで膝が痛い。関節のこわばりが強い朝などは、髪をとかすことすらできない。

 リウマチ科のドクターに相談すると「目の中に菌がいないとわかったら、注射を再開しないといけない」と言われた。でないと関節の破壊が進んで取り返しがつかなくなるとのこと。しかし、眼科のドクターは「生物学的製剤を再開するとまた感染症が再発し、一からやり直しになるよ。まだ注射はしたくないな~」と言う。

 自分自身の気持ちは、多少関節が痛くて生活の質が落ちるとしても目の感染症を繰り返して視力がさらに落ちることの方が怖い。ただ、関節の変形も嫌だ。今のところは、片足のわずかな変形があるだけなので、さして不自由を感じたことはない。しかしこの変形が進むと、靴が履けなくなったり、手指が曲がって生活に大きな支障が生じるようになるのだろう。そう思うととても悩ましい。

 

 そこでふと思うのだ。ドクター間で話し合って治療方針を決めていただけたら良いのに。大きな総合病院ならば違う科の医師同士で話し合って治療方針を決めていくということが行われるのだろうか?いや、義父が大学病院で皮膚科と整形外科、内科でお世話になっていて、その皮膚科で乾癬の治療に生物学的製剤を使っている。整形外科で関節置換の手術を受ける時に、皮膚科の医師は生物学的製剤の中止は必要ないという判断をしたが、整形外科の方は、感染症が怖いので術前術後のそれぞれ1月、バイオ製剤の中止を独断で決めていて、診療科間の連携はどうなっているのだろうかと不思議に思ったのを覚えている。

 起立性調節障害も、いろいろな診療科がチームを組んで多角的に治療してくれたら、子供たちはもっと早くに苦しい時期を脱することができたのではないかと常々思っていたことを思い出した。