高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

過去に起立性調節障害に苦しんだ娘から、今苦しんでいる方々へのアドバイス

 高校時代、起立性調節障害に苦しんだ娘。高校卒業から8年。何とか大学を卒業し、就職もした。最近は、晴れた日には自転車通勤をして体を動かしているので、早朝から夜中までという撮影が続いた後でも、長く寝込むような病気をすることはほとんどなくなった。しかし暑い時期や疲れが溜まったり、忙しすぎて水分補給を怠ると、今でも眩暈や頭痛に苦しめられることがあるそうだ。

 ごく最近のこと。仕事関係者の娘さんが起立性調節障害で困っているという話を職場で聞いたとのこと。もちろん自分は体験者なので何かしてあげたいと心底思ったそうだ。しかし、彼女曰く「実は当時の記憶がほとんどないんだよね。漠然と高校時代はしんどかったということは勿論覚えていて、担任の先生や親を心配させたという事実も忘れられない。吹奏楽部に所属していたということも、覚えてはいるし、九州大会に行ったことも忘れてはない。だけど、当時から親密で、今でも付き合っている高校時代からの数人の親友のこと以外は、友達の名前も先生方のことも、日々どんな風だったかも全く思い出せない」と言うのだ。

「人は、きっと防衛本能があって、しんどかったことは忘れるようにできているんだと思う」と娘。起立性調節障害で苦しんだ本人が何のアドバイスもしてあげられないのは、不甲斐なく申し訳なかったのだけど、これだけは言ってあげたんだよ、とみゆき。

カイロプラクティックは試してみて。それと何か好きなことがあったら、それを追いかけて。例えば私には大好きなミュージシャンがいてそのコンサートに行くことを目標にして日々過ごしていたの。これは今でも大切にしているよ。必要な息抜き!頑張るパワー!」

 本人はすっかり忘れているようだが、当時みゆきにとって吹奏楽が、彼女の生きる力だった。「授業に参加できないのに、夕方の吹奏楽の練習に来るなど理解できない」とよく先生方には言われたが、朝の苦手な彼女が、夕方からでも理由を見つけて出かけて行ったことが、結果的に彼女を救ったと、私は今でも信じている。あんなに大好きで、必死でしがみついた吹奏楽が今となっては、どうでもよくなっていて、有名なブラスバンドのコンサートにも見向きもしなくなってしまったことは、多少残念ではある。けれど、彼女の”息抜き、頑張るパワー”が今もあるのは、とても嬉しい。”頑張るパワーになる何か”を私も見つけなければ、と思う。