高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

認知症の人の心の内

 義妹が訪ねて来た日のこと。義母と義妹と私と三人で、とりとめのないおしゃべりをしていた時のこと。義母が少し席を外す瞬間があった。戻ってきた義母から出た言葉に衝撃を受けた。「二人で私を老人ホームに入れる相談をしてたでしょ?」

 私自身は(これは私の母も同じだが)もし自分に介護が必要になったら、迷わず施設に入れてほしいと思っている。しかし、それは私自身の価値観であって、義母もそうであるべきだとは思っていない。自立度が高く、足腰もしっかりしている義母を施設に入れるなど、想像したこともない。両足の変形性膝関節症の関節置換手術をしている義父の方が、もしも寝たきりになってしまったら、大柄な義父の介護をするのは体力的に大変だろうと想像したことがないといったら、うそになる。けれど義母が健康でいる限り、一緒に義父を介護するなら何とかなるだろうとはうっすら思っていた。

 まだまだ、何とか自炊も続けている義母については、正直先のことは何も考えていなかった。なので、老人ホームに入れられてしまうかもしれないと義母がずっと心配していたとわかって驚いたし、切ないし、そんな思いをさせていたのかと申し訳なくなった。

 日頃からもっと細かく、丁寧に義母の不安を聴いて、将来どうしたいのか、どんなことはしてほしくないいのか、など、しっかりと介護する側が知っておく必要があると痛感した。そして「大丈夫だよ、嫌だと思うことはしないよ」と常に伝え続けなくてはいけないようだ。

 ふと、父が亡くなる数日前に「最近ママ(つれあい)に迷惑ばっかしかけてるんだよね~」とつぶやいたことを思い出した。忘却の人の心の内は、不安で、じれったく、不甲斐なく、切ないのだということをどんなときにも忘れないで、問題行動が多い時にこそ、そこに思いをはせるべし、と肝に銘じたい。