高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

驚きの鬱対策

  仕事が再開して、コロナ前のような日常が戻ってきた。今でも彼女は、定期的に精神科を受診して、睡眠導入剤と食欲増進剤を飲んでいる。鬱を発症したことは、師匠にも話したという。

 経験の豊富な大人であっても、弟子が鬱であることを告白したら、多少なりとも動揺するものだろうと想像する。が、彼女の師匠は、「ちょうどいい機会だから、満員電車でコロナにかからないように、自転車通勤を始めるか?」とおっしゃったという。その足で自転車屋に彼女を伴い、即決で自転車を買ってくださったというから驚いた。

 みゆきの自転車体験と言ったら、彼女が6歳の時に、2歳年下の弟が自転車を覚えようとしているのにライバル心を燃やして乗れるようになったという、乏しいもの。それ以降は全く乗っていない。小学生のころは自転車で遊びに行くことは禁止されていたし、中学でも学校から徒歩圏内に住んでいたので、自転車に乗ることは皆無。高校時代は自転車で通うには若干遠かったので、もっぱら電車とバスで通った。休みの日も自転車でどこかへ出かけるようなアウトドア派ではなかった。

 人間、6歳の時に覚えてそれ以降全く乗っていなかった自転車に乗れるものだろうか?コロナにかかるより、交通量の多い東京で運動音痴の人間が自転車に乗る方が怖いような気がする。

 が、師匠は彼女の自転車体験も把握しながら、自転車に乗ることを課した。職場からの夕暮れの帰宅の道が、彼女の都会での自転車デビューとなった。さすがの師匠も、一人で乗る前に、公園で特訓をして下さってから、送り出してくださったようだが、初めての自転車旅は、1時間強かかったとか。地図で見ると、道を覚えて慣れてくればもう少し時間は短縮できそうだ。

 これで、運動量は確実に増すだろう。動けば食欲も増し、健康的に疲れて眠れるようになるはずだ。みゆきの起立性調節障害で臥せっていた高校時代、私には思いもつかなかった荒療治を考え、実行してくださった師匠の英断に感謝。