担任の先生に、卒業するための出席目標を示していただいたおかげで、みゆきはメトリジンを服用するようになった。しかし、急に具合が良くなったわけではない。起きたいという意欲が高まったというだけ。なので起床には手助けが必要だ。起きる目標時刻の一時間前に、メトリジンを飲ませてほしいと彼女から頼まれた。以前は石のように眠っている彼女にメトリジンを含ませることは不可能だった。
それが、起きる目標ができてからは違うのだ。まだ遠い向こうの世界にいて、目を固く閉じたままの状態で、何とか薬を飲むようになった。時には、頭痛が予想される朝には、ロキソニンも加えてほしいと言うときもある。ロキソニンを空腹で飲ませることには、かなり抵抗があった。でも何も決められなくなっていた彼女が、自分の意志で決めたことには反対したくなかった。
12月になって、卒業認定会議があると学校から知らされる。しかし、まだ会議の結果を聞けない時期に、彼女から受験をしたいという言葉が出た。受験旅行の手配を手伝ってほしいという。彼女曰く「認定会議の結果を待っていては、航空券やホテルの手配が手遅れになる。」
確かに1月末から行われる私立大学の入試に行こうとすると、今の時期に予約しなくては手遅れになる可能性がある。
でも、卒業はできるのだろうか?
高校2年のときからの闘病で、受験勉強どころか、
日々の勉強すらできていなかった彼女が受験?
それも親元を離れ
東京の大学を考えているというのだ。
困惑した。