高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

初めての一人暮らしへ

 思いがけず大学に合格し、みゆきの止まりかけていた時計が動き始めた。4月からは東京で一人暮らしだ。しかし未だに顔色は悪く、食欲も回復していない。疲れると、以前のように激しい頭痛と、吐き気で動けなくなり、眠り姫になる。

 東京での住まいは、学生寮のようなところでなくては無理だろう。大勢の目があって、いざという時には何らかの助けがもらえる環境。幸いなことに、彼女の大学の寮に空きがあり、入れることになる。しかし大学からは、かなり遠く、電車で通わなくてはいけないという欠点がある。大学は都心にあるので、行きも帰りもラッシュにぶつかるに違いない。発病以来、乗り物が大の苦手になっている彼女には、大きな障害になるかもしれない。その上、寮は完全個室で、賄いもついていないというのも難点だ。放っておけば、食べることを後回しにしかねない。けれど、寮には寮母さん夫妻が常駐して下さっていて、一階のフロントを必ず通って出入りしなければならない、とのことで安否確認はしていただけそうだ。

 通常、大学入学の予定のある子供の親御さんは、入学の数か月前から部屋探しをするものらしい。しかし、みゆきの場合は大学受験をすることも、卒業できるかすら直前まで想像だにできなかったので、事前の準備など皆無だ。多少難点のある大学寮だが、時期的なことを考えると、ここで妥協するしかなさそうだ。

 大学の合格から高校の卒業式までは、あっという間だった。しかし、卒業式から、彼女が家を出るまでの時間は、さらに飛ぶように過ぎたように思う。

 いよいよ、彼女の一人暮らしが始まる。