高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

大学生活

 満開の桜に出迎えられて、みゆきの東京での大学生活が始まった。大学寮に入り、約40分をかけて電車で学校に通う。経験したことのない満員電車にゆられて気分が悪くなり、途中下車することを繰り返したあげく、ラッシュになる前の、早朝の電車に乗るという技を覚えた。この習慣は、1年時から、大学卒業まで続けたらしい。朝起きの苦手な彼女が、自分で起きて早朝の電車に乗るなんて、私たちには想像だにできなかった。早く起きて、寮から駅までを歩き、また、大学の最寄駅から学校までを歩くという習慣は、病気からの回復を後押ししたに違いない。これぞ回復の連鎖。朝早く起きて歩くから、自律神経が整う。自律神経を整えると、体調が良くなる。体調が良くなると、食欲も出て、体力がつく。そして色々なことを楽しめるようになる。楽しいと、もっともっと意欲が増す。発病したときに、「起立性調節障害は、生活習慣を整えて、軽い運動をすると治るよ。」と言ったドクターの言葉を思い出す。

 高校時代にあまりにも勉強できなかったからと、一週間びっちり授業を入れている。これも、4年間続けた。気力の充実した彼女の大学生活は、本当に楽しくてたまらないようだった。”アート&デザイン”の大学に出会えたのは、病気のおかげだと彼女は言う。病気にならなければ、知るよしもなかった世界だ。

 大学の教授陣も素晴らしかった。デザイン、アートの世界では、世界的に超一流の方々が教鞭をとっておられる。この学校の学生たちも、素晴らしい。芸術家タイプの学生たちのいでたちは、奇抜で突き抜けていて、初めて見たときには腰を抜かしそうだったが、中身は向上心が高く、繊細で人の痛みを理解できる優しい人たちだと娘は言う。察するに、娘のような辛い経験のある人たちも大勢いるのかもしれない。

 大学の授業が始まってからしばらくして、私に送られてきた娘からのメール、

 

”おかあさん、大学、とってもとっても楽しいよ!

色んなことに挑戦したくて、クラスの役員をやることにしたよ。

この大学ならではの、部活動もやることに決めたよ!”

 

この喜びに溢れた弾むようなメールは

今も私の宝物になっている。