高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

ミステリー

 認知症を発症した義母、診断結果に家族は(多分本人も)少なからず動揺したが、今までに流れて来た長い時間が突然激変するはずは当然ない。いつものように義母は、朝昼晩台所に立ち、難聴の義父と大声で怒鳴りあったり喧嘩したりしながら、午後になると大好きな花々の水やりをする。今までのように好きな時に車で買物に出かけることはできないけれど、できるだけ不自由しないように声をかけて、私とスーパーに行ったり、時には私の夫と出かけたり。当初、”これからは歩いて食料品も置いている近くのドラッグストアに買物に行く”と宣言したが、それはまだ果たせていない。でも、これで良いのかもしれない。無理なく、ゆっくり、より快適な生活スタイルを探っていけば良いのだと思う。

 時には、ビックリするハプニングもあることも、心得ておいた方が良いのかもしれない。私が大事にしていた、フィンガーライムの苗木が、突然消えたのだ。柑橘の大好きな私、まだ市場にはあまり出回らないフィンガーライム。去年の植木市でたまたま見かけて購入した。幸い一年間枯れずに、少し丈も伸びて、収穫できるのはいつだろうかと楽しみにしていた。義母も興味津々で、花の水やりのルーティーンに加えてくれていた。それが、昨日突然消えた。跡形もなく。「ここにあった木がなくなった」と母が言うので見に行ったら、本当に何もない。根を掘り返した跡もない。「あなたがどこかに植え替えたの?」と義母。当然私ではない。勿論、夫でも、義父でもないはずだ。仕方がないので、「貴重な種類の柑橘だったから、泥棒さんに盗られたのかも」と言っておいた。

 その日の夕方のこと。「あの木、私が切ったかも」と義母。草取りをしていて、草を取るのに邪魔だったからだそうだ。なるほど。確かにフィンガーライムには棘があって、邪魔になったに違いない。

 「貴重な種類の柑橘」と言ってしまったことを後悔した。しかし、そこはうまい具合に抜け落ちてくれたようだ。「嫁にお金を取られた」「嫁がご飯を食べさせてくれない」と言わないことに感謝しようと思う。折しも恒例の植木市の季節。新しい苗を買って、今度は人目につかないところに、こっそり植えるとしよう。