高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

結婚式のカメラマン

 

 

 結婚式の翌日、みゆきは予定より一日遅れで帰京した。台風の暴風で眠れぬ夜を過ごした次の日に結婚式のカメラマンとして走り回って撮影したので、さぞかし疲れたことだろう。しかも台風の前日は残業明けで一時間睡眠。予定通りなら、その日の最終便で帰らなければいけないところ。式が5時間遅れで始まったせいで、飛行機に乗れなかった。職場にお断りして滞在を半日延長していただき、次の日のお昼の便で帰京して、スーツケースを持ったまま出勤する運びに。8年前には想像もできなかった超過密スケジュール。4年前の少し体調が安定してきた大学時代でも、今回のようなことは無理だったと思う。

 スーツケース持参の出勤は大変そうだったが、式のあった夜、家族でその日の余韻に浸ることができたのはありがたかった。子供のころから地元の親戚の中で一番親しく付き合ってきて、学校は違ったものの大学時代も共に東京で過ごした従姉の結婚ということで、感慨もひとしおだったに違いない。しかも年も一つしか違わない。口には出さないが、自分の未来も思い浮かべながらの撮影だったのではないかと想像する。

 式の遅延のおかげで奇跡的に生まれた、式後の家族水入らずの静かな時間。明日はさっそく仕事だし、さすがに疲れて早く寝てしまうだろうと思ったが、花嫁が一刻も早くインスタグラムをアップしたいだろうと、帰るなり当日撮影した写真のリタッチを始めた。プロの写真は、色味や細部の粗などをいっぱい修正するのだということは聞いて知っていた。だが、みゆきが写真編集の作業をしているところを横で見るのは皆初めて。素人目には全く見えないほどの細かい不都合を丹念に消していく。驚くほど繊細な作業に目を見張る。まだまだ駆け出しではあるものの、師匠について写真の勉強をしているだけあって、以前彼女が撮っていた写真とは比べ物にならない。髪をキリリと小さくまとめ、重いカメラを両肩に担いでキビキビと広い式場を駆け回り撮影している姿も、頼もしかった。長い髪を無造作にたらした普段の”のんびり”な”みゆき”からは到底想像できない。従姉もきっと数々の力作写真と、成長したみゆきの姿を見て喜んでくれたことだろう。