高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

お腹が痛くなるほど笑った

 ”懸案だった富士山での撮影が無事終わり帰着しました”、とラインに一枚の写真が送られてきた。時刻は午後11:30。みゆきが、足首まで隠れるほど長く白い雨合羽を着て、暗闇にたたずんでいる写真。背景は漆黒の森。

 衝撃的な写真ではあったものの、あまりに遅い時間だったので返信もせず、後日聞いた話。出発は午前5時。2時間かけて現地まで運転し、撮影が終わって帰宅したのが同日の午後11:30だったとのこと。ずっと土砂降りの雨の中での撮影だったらしい。雨の日、しかも土砂降りの中、富士山で撮影とは⁈富士山である必要はあるのかと聞くと、当日はファッション雑誌の撮影で、背景が真暗である必要があっての富士裾野の暗闇の森だったとのこと。その理由を聞いても、素人の私たちにはさっぱりわけがわからない。

 わけはわからないのだが、雨合羽姿の彼女の写真をじ~っと見ていたら、おかしくてたまらなくなった。真っ暗闇に佇む白い影は、まるで幽霊のよう。私の記憶の中の彼女は、雨の日は決まってひどく具合が悪くて、寝込んでいた。雨合羽なんて高校時代に着ているところを見たことは当然ない。当時の彼女は、雨合羽は着ていなくても、普段の姿が、やせ細って影が薄く、長い髪を整える気力すらなく、いつもボサボサの頭、今にも消え入りそうだった。それが、今回はしっかりと筋肉のついた真っ白い幽霊。

 この奇妙な写真は、モデルさんを撮る前のカメラチェックとしてアシスタントを撮影したものらしい。これは、今回に限らず毎回行うお決まりのカメラテストだそうだが、カメラマンの方も、この写真は面白いと思ったらしく、日頃はくれない試し撮りの写真のデータを下さったということらしい。彼女の病気の遍歴をご存じな師匠も、”小食バッジ”がいらなくなった逞しい彼女の幽霊姿を面白く思って下さったのかもしれない。

 あまり私が笑うものだから、反撃のために言ったみゆきの一言に凍り付いてしまった私。「写真を大きくピンチアウトして見てごらんよ。後ろの森の中に、もしかしたら何かいるかもよ(笑)!!」