高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

いざ、隣県の病院へ

 道中長かった。しくしくと泣く母を気遣って、義妹は高速道路を使わず、休み休み行くことに。まめに、トイレ休憩をし、お薬が切れるといけない、と眺めのいいドライブインで食事休憩も。「何が食べたい?」と聞くと「ピザでいい」との返事。”ピザ良い”ではなく”ピザいい”なのねと思いながら、注文カウンターに並んでいるときに、母が大声で泣き始めた。マズイ!お薬が間に合わなかった!!!!!ウイークデイとはいえ、周りにお客は結構いる。慌てて、義妹が海沿いの素敵な座席を確保して、母を座らせる。傍から見たら、老人虐待でもしているように見えたかも。

 食事を運ぶと、お腹は減っていたらしく、泣きながらピザを食べ始めた。鼻をすすりながら、「美味しい。チーズと蜂蜜のコンビネーションが絶妙」と呟く。泣いていても味は分かるらしい。先日具合の悪い母を連れて、大好きな抹茶ソフトを食べた時、私は全く味を感じられなかったというのに、当人は、味が分かるのね⁈

 長い長い道のりを経て行きついた隣県の病院は、天国のようなところだった。病院そのものは新しい建物ではない。でも庭は非常にきれいに整えられていて、待合室も無機質な感じではない。受付の方の優しい笑顔も印象的だった。待合室の優雅なソファーで待つことほんの5分ほど。病院の理事長と言う方が、自ら待合室まで迎えに来てくださる。「あなた方が隣県からいらした方たちね。どうぞお入りください」と面接室へ。そして、丁寧な自己紹介の後、私たちのことを詳しくインタビューしてくださる。どういう経緯でこの病院へ来ることになったのか、母がどこで生まれてどこで育って、今があるのか、雑談をしながらいろいろなことを聞き出して行かれる。雑談のように冗談を挟みながらのインタビュー。まさにこれが問診なのね、とあっけにとられる。これは心療内科だから?すでに私はこの病院に来て良かったと心底安堵している。これは母も同じだと見受けられる。やけに落ち着いた顔になっている。

 それから、今度は家族の話を聞いて下さる間に、母は健康チェック。脳のCT、レントゲン、体重測定、血液検査をしたようだ。その後、母も交えて看護師長からの入院のオリエンテーション。あっという間に、母は病室へ移動することに。私たちから荷物を受け取って、看護師さんが母を病棟へ先導しながら、今日はお食事のあと音楽療法の日だと説明を受けている。その間母は私たちを振り返りもせずに行ってしまった。家族全員良い病院に巡り合えたと胸をなでおろした。どうか、治療がうまくいきますように。