高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

脳シンチ検査

 母の具合は相変わらず良い。お薬のおかげだと思うが、暗く沈んで物憂げな様子はもう見られない。本来の母よりかなりハイテンションで物凄く饒舌なのが若干違和感あるものの、何かに取りつかれたような恐ろしい感じじゃないのは嬉しい。

 入院先で一通り血液検査や、CT、MRI検査、認知症テストなどをしたようだが、認知機能の低下は見られないので”老人性鬱”という病名になりそうだ。念のため脳の血流を調べるため外部の大きな病院で検査することに。今日がその検査の日だった。

 外出の為、いつもの病衣ではなくお出かけ着を着た母は、ことのほか楽しそうでほっとする。検査なので着脱が容易なように薄い麻の長袖セーターとボタンやジッパーのないズボンを用意して行ったら、「まあ、あなた、私の好み通りの洋服を新調してくれたのね」とご満悦。新調したことにも気が付く鋭さ。この外出のために、数日前から院内で歩く自主トレーニングもしていたらしく、足取りもしっかりしている。先週面会に行った時には、腰が痛いとのことで車いすに乗っていたので、今日は車椅子であちこちしなければならないと覚悟していたのに。

 脳の血流を調べる脳シンチ検査には、放射性の造影剤を使って、一時間余りかかるとのことで、お手洗いのことなども心配で、万一失敗した時のために着替えまで準備したが杞憂だった。ただ、以前入院先で受けた脳のMRI検査がよほど怖かったらしく、検査前に「怖いことしませんよね?」とドクターにも技師さんにも何度も尋ねていたのが子供みたいで笑えた。実際のところ検査は痛くもかゆくもなく、ただ造影剤を使うので注射がクリアできればあとはじっと1時間余り寝ているだけ。本人、寝落ちしてしまいそうだったと笑っていた。トイレの失敗もなくセーフ。

 検査外出から戻るタイミングが、どうしても病院の昼食には間に合わない時間なので、外で食べることになる。病状が悪ければ母を連れての外食はしんどいので、一応サンドイッチを持参した。海を眺めるような眺望の良い公園などで食べられれば最高だが、この酷暑。最悪車内で食べればいいか、と考えていた。だが、今日は母の調子があまりに良いので、私の作ったおいしくないサンドイッチよりも、プロの作った美味しいものを食べてもらいたくて、近隣のカフェで食べることに。たまたま評判の良いおしゃれなベイカリーでイートインできそうなので、そこに飛び込んだら、ラッキーなことにお客の少ない時間帯だった。母が入院してからずっと食べたかったというサンドイッチと焼きたてのピザにありつけた。病院でもそうだったが、ベイカリーでもしべりっぱなしの母。調子は悪そうではないが、話の中心は始終自分のことなのが不思議だ。しばらく会っていないはずの弟家族のことや、孫のこと私の義父母のことを聞くことは全くない。当然先日亡くなった伯父の話にもならなかった。そこに触れられず、ほっとしたような、あまりに自分本位なのが、少し寂しいような。本来自分が、自分が…という人ではないだけに、悲しくもある。

 検査の結果は明日、入院先の病院の方へ送られるとのこと。そのあと私たちには説明があるのだろうと思われる。結果が悪くないことを祈るばかり。慣れない外出をして、さんざんおしゃべりをしたので、母も疲れたはずだ。どうか、具合が悪くなりませんように。