高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

鬱の人に告げる真実

 母の2つ年上の兄が急逝した。母は未だ鬱の治療のため入院中。葬儀に行かないまでも、訃報は伝えるべきだろう。伯父は隣県に暮らしていて、昨年、末期の大腸癌という診断でしばらく入院したのち自宅療養をしていた。その自宅療養の期間に母も見舞いに行って、しばらく看病もしてきたので、伯父のその後の体調は、気にしていたはずだ。

 ごく最近親戚から入った情報では自宅療養も順調で、来週から近隣のグループホームに入所すると聞いていた。連れ合いも高齢なので、長期にわたる介護は大変だろうと案じていたので施設に入ると聞いて安心していた。

 ところが、脳梗塞を起こしたとかで入院、そのまま帰らぬ人になってしまったという知らせだった。苦しむ期間がごくわずかだったのは幸いだった。ただ、入院中の母にどう伝えたらいいものか。もしかすると本人が入院する事態になった時点で、もう兄弟とは会えないだろうと、覚悟していたかもしれない。しかし、鬱の人の心の内は測りがたい。知らせるべきか、知らせない方が良いのか。弟に相談すると「知らせないわけにはいかないでしょう。今回は入院中でコロナの罹患者も急増しているからお葬式には行けないけれど、退院したらお参りに行こうね」と伝えるのが良いのじゃない?という意見。確かにそうだ。ただ、本当にそれで良いのか。迷った挙句、入院先の主治医に相談することに。すると「私だったら鬱で入院中の親に、近親者の訃報は伝えないと思います。最近調子が上向いているとはいえ、大きなショックで後戻りしかねない。そうなると、回復に以前より長い期間が必要になると思う。」というご意見。

 主治医とは治療方針をお聞かせいただく面談で、1月ほど前に一度お会いしただけだったが、「私だったら~」という言い方が良い。上から目線というのではなく、あくまでも自身が患者家族だったらと言う言い方は、実にしっくりきた。嘘をつくわけではなくても、真実を言わないのはしんどい。後になって、どのように伝えて良いのかも見当がつかない。しかし、やはり今回は知らせないことにしよう。伯父もきっと母の回復を祈っていたはずだから。