高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

退院から1ヵ月

 精神科病院を退院して一月。当初はしきりに病院へ戻りたがった母だが、少し顔向きが明るく、足取りもしっかりしてきたように感じる。鬱の特性もあるのかもしれないが老人というのは総じて変化に弱いのだと、納得する。

 退院1ヵ月ということで入院していた病院の外来を受診したら、「元気そうだね」と主治医。一見しただけで、母の回復が見えるらしい。相変わらず母が、しっかり受け答えができることに主治医が舌を巻く。「向精神薬って食欲増進の副作用がありそうですね。食事を食べ過ぎてしまうので、お薬の量を減らしていただけますか?」と母。「おっしゃる通り、気分を上げる薬には、食欲増進の効果もあります。入院中から体重は何キロ増えましたか?」との医師の問いに「1.7㎏」と母が即答する。「施設で昨日計ったらは32.2㎏だったから」カルテを見ながら医師は苦笑。「確かに入院中は30.5㎏、合ってます!入院中から頭はしかっりしておられたもんね」

 精神疾患の特性なのか、それとも母特有の症状なのか、この1.7㎏を言い当てる鋭いところが私は何ともいえず怖い。私の心の奥底-私自身でさえ気づいていないような潜在意識まで-を全て見透かされているような、母を見ているとそんな怖さが、ずっとあるのだ。

 病気の経過は良好のようで、母の訴えた食欲を増進させる抗うつ剤は半量になり、圧迫骨折をして以来処方されてきた痛み止めも、2/3に減薬。次回の診察は2か月後。お薬の助けが多少あるとしても、食事が美味しく食べられるのは嬉しい。入居している施設の食事は、お薬のせいだけでなく実際美味しいのだと思う。母に食べたものを尋ねると、メニューが豊富だし、併設の菜園の新鮮な食材を使っているとのことだった。それに何より小規模なので、丹精込めてお食事を作ってくださっているのだと思う。暇を持て余しがちな、施設生活で食事は何より大きな楽しみのはずだ。食事が美味しいことだけをとっても、施設に入ったのは正解だと、母も感じてくれていたら嬉しい。