高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

担任へお手紙再び

 私たちの想いは、どうも先生に伝わっているようではない。夫は自転車通勤を長年続けている人だが、季節の花々の開花に疎い。通勤途中の街路樹の花々の会話をすると、「気づかなかった」ということがほとんど。季節の花々に関心がないのだろう。人によって、”そこにあるのに見えないもの”があるにちがいない。先生に関心をむけていただくように丁寧に想いを伝えなくてはならないのだろう。もう一度お手紙を書いた。

 

2013.8.28

○○先生へ

 お世話になっております。夏休みになってからも、みゆきの体調が改善せず、先生にはご心配をおかけいたしております。

 夏休み、4月からの疲れを取りながら、体力をつけたいと思っていました。同時に、

起立性調節障害の専門医を見つけて、どんなに遠いところに行ってでも治療をしたいと考えていました。受験の年でもあるので、本人も部活を辞めて、徹底的に病気を治したいという考えも心の片隅に持っていたようですが、彼女にとって吹奏楽はたった一つの心のよりどころだということで、コンクールに出るために“課外にも出ながら部活もやる ”という選択をしました。もしかしたら、その選択は、今の彼女の体力からすると欲張りすぎていて、大切な治療の時期を逃してしまったのかもしれません。結果、課外にはほとんど出られず、先生にもご心配をおかけすることになってしまいました。しかし、もしかして、あの時点で、部活はやらないと決めてしまっていたら、強いモーティベーションを失って、全く動けないくらい体調が悪くなって、今よりもひどい、ひきこもりの状態になっていたかもしれないとも、私どもは密かに思っています。

 昨年、大学病院で起立性調節障害だと診断していただいた際、ホルモンの検査をしました。その結果、下垂体ホルモン(ACTH,コルチゾール)が全く分泌されていないということがわかりました。下垂体ホルモンが出ないということは、体や心を動かすエネルギーが湧いてこないということ。その結果、朝起きられないのだとか;下垂体ホルモンが全く出ない状態で、体を動かすのは、ガソリンの全く入っていない状態で、車を動かすようなもの、との説明を受けました。

 自律神経の病気の不可解なところは、大好きなこと、強く心を惹かれることをやろうとすると、下垂体ホルモンが分泌されるらしいのです。そんな説明を受けていましたので、彼女の大好きな吹奏楽で、下垂体ホルモンの分泌を促し、気力を奮い立たせて、それを機会に立ち上がらせたいと願ったのですが、この病気の厄介なところは、疲れすぎると大きなダメージを受けるということ。九州大会後は、午後になっても起き上がれず、食事もろくにできず、夜は眠れないという、ひどい悪循環に陥ってしまいました。課外に行けないという焦りも、病気を悪化させたのではないかと思っています。

 

先生が「何をしたらよいですか?」と聞いてくださったと伺いました。お心にかけていただき大変嬉しく思います。朝、具合が悪く、午後からは元気の出る病気は、傍から見ると怠けているようにしか見えないと思うのです。先生方が病気のことを理解して支えて下さる、ということが、彼女には何よりありがたく、力になります。

それから、専門の病院探しにお力を貸して頂けないでしょうか?病気を見つけて下さったのは、大学病院ですが、いただいている昇圧剤は、あまり効いているように思えません。大阪医大*が、起立性の治療ではすぐれているようですが、残念ながら患者数が多すぎて、高校生は治療の対象外になっているとのこと。手当たり次第に専門書を読み、インターネットでも探してはいますが、どこへ行ったらよいかわからず、途方に暮れています。

聞くところによると、○○高校にも娘の知っているだけでも何人か同じ病気に苦しんでいる方がおられるとか。体育の先生にも過去に同じ病気を克服した方がおられると聞きました。その方々がどのような治療をされているのか、どのような治療が有効であったか、何とか情報をシェアしていただける方法はないでしょうか?昨年の担任のK先生も今年、同じ病気のお子さんを担任されていると伺いました。養護の先生は、そのような情報をお持ちではないでしょうか?あるいは、先生の多くの教え子さんの中に、ODを研究している方はいらっしゃらないでしょうか?お忙しいところ大変恐縮でございますが、病院の情報収集にお力をお貸し頂けたらと思います。

 

いろいろな伝手を探して、現在は大学病院の治療に加え、カイロプラクティックで整体の治療をしていただいています。みゆきによると吹奏楽部の1年上のトランぺッターだった方も同じ病気で、整体治療をされたとのこと。この治療に望みを託していますが、残念ながら今のところは、さして変化がないようです。

 

起立性調節障害は、暑い時期に症状が悪化し、涼しくなると血圧が上がり安定してくるようですので、一日も早く涼しくなってほしいと願っています。残暑厳しき折から、先生にもくれぐれもご自愛下さい。長い手紙を読んでいただきありがとうございました。

 

起立性調節障害について書かれた、大阪医大の田中先生の著書**を同封いたしました。

内容が、残念ながら高校生向きではありませんが、多くの方にこの病気を知っていただきたいと思います。職員室にでもおいていただけませば幸いでございます。 ▽▽▽

 

 

*大阪医大:2013年当時は高校生は診ていただけなかった

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朝起きられない子の意外な病気       武香織  中央公論ラクレ428

起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応 田中英高  中央法規