高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

消えた洗濯物と消えた着替え

 入院中の義父からリハビリ用のズボンが一枚もないとの連絡が入って、困った。先日入院手続きの書類を病院へ届けた時に預かったのは、Tシャツ一枚だったので、入院時に持参した新品の5本のズボンはまだなくなっていないだろうと思っていたのだ。しかしすでに無いということは、何かアクシデントがあって日に何枚も履き替えたのかもしれない。あわてて、新しいズボンを3本と、予備に夏用の薄手ズボンを2本差し入れた。引き換えに汚れた5本のズボンを持ち帰る予定だった。が、「汚れ物はないよ」と父が言ったらしいのだ。あれれ、それはおかしい。コロナ禍で、洗濯物の差入れは看護師さんを通さないといけない。事情を説明して汚れ物を探してもらったら、きれいにたたまれたままの新品ズボンが出てきたとのこと。結局汚れ物はなかったという。大変だ。もしかすると、義父は転院してから全く着替えていないのかも。手術をした大学病院では、面会できないということで、入院中ずっと病院の病衣を借りていたので、病衣の取り換えの時に着替えはしていたはずだ。しかし、転院先では、病衣貸出しのシステムはないらしい。転院して一週間以上になるから、お風呂には入ったはずなのに、全く着替えていなかったということか。さすがに看護師さんも驚いた様子で、「次回からお風呂は介助いたします」と言ってくれた。一週間着替えなかったという事実より、義父の物忘れが始まったことが私には衝撃だった。

 三週間ほど前までは、物忘れの始まってしまった義母と、その事実にイライラしながらも、日付やお金の管理など一手に引き受けてとてもしっかりしていた義父だったのに。義母よりも5歳年上で、しかも難聴の義父だ。物忘れが始まっても何の不思議もない。おまけに大きな手術をして、全身麻酔をしたのだ。今までの生活とは全く違った環境にいて、おまけにコロナ禍で面会もできない。看護師さんたちは以前にもまして、目の回る忙しさ。話し相手などしてくれないだろう。最悪な条件が重なってしまったのだ。

 あと2週間もすれば、義父はリハビリ入院を終えて帰宅の予定だ。物忘れをする義母と義父の生活はどんなものになるのだろうか。手術した足はどれくらい回復するのだろう。手術前には、術後のリハビリが少しでもスムーズになるように、散歩をして筋肉をつけておくという大きな目標があった。なので日に二回、雨が降っても散歩は欠かさなかった。しかし手術が終わった今、これからのモティベーションはどのように維持していけばよいのだろう。重く暗い課題がのしかかってきたような気分だ。