高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

とうとうやっって来たその日

 義父が5週間の手術入院を経て帰宅した。退院の手続きは私だけで済ます予定が、できるだけ早くに会いたいと思ったのか、珍しく義母も一緒に行くと言い出し、義母を同伴した。入院費は「20万円入っているから」と封筒を預かり、私が支払って、お釣りをもとの封筒に入れて義母にお返しした。その日は義父に美味しいものを食べさせたいと、スーパーで買い出しにも付き合って帰宅。久しぶりの水入らずの食卓を楽しんで二人ともいつになく楽しそうだった。

 ところが次の日、義母が早朝訪ねて来た。「お金が全くない」と。「あなたに全部預けたよね」とまで。

 とうとうこの日が来てしまったと絶句した。しかし、慌ててはならないと自らに言い聞かせて、「そうね。入院費の封筒をお預かりして、お支払いした後、お釣りを封筒に入れてお返ししましたね」と説明してみる。

 一度はそう言ったものの、ふと思い返して「まずは、ちゃんとお返ししたかどうか、昨日私が持っていたバッグを確認してみますね」と仕切り直した。義母の前で私のバッグをひっくり返して、ひとつひとつ義母に見えるように中身を確認してみる。「やっぱり、お返ししたんだと思うわ」

 そう言ってから、義母が昨日持っていたバッグを同じようにひっくり返して、ひとつひとつ確かめてみる。しかし、ない。義母が持っている他のバッグも探してみるが、やはりない。もしかすると、いつも大切なものをしまっているお決まりのあの場所にあるかもしれないと思い至って、一緒に探してみる。しかし、ない。さて、こうなったらどこを探すべきか。先日、靴がトイレから出てくるという珍事があったばかりだから、もしやトイレか?とも思ったが、「お決まりのあの場所」をもう一度丹念に探してみることに。そこで、ふと、その棚に汚れ防止の薄いレースの敷物を敷いていることに気づいた私。「もしや、その敷物の下に、入ってしまっていませんか?」と聞いてみた。「まさか!そんなところには一度も入れたことはない」と言いながら義母が渋々探ると、出て来た!!出て来た!今回無くなったと言っていた封筒以外に、2つもの封筒が!とんだへそくり発見に、唖然とする義母。暗い雰囲気になってはまずいと「あらあら、へそくりまで出てきて、クリスマスプレゼントね!」と笑いながら退散した。

 当然「思い違いしてごめんね」の一言はなかった。本人からの謝罪はいらないとしても、これは私一人で抱えるには大きすぎるので、夫と義妹には知らせておきたいと思う。どう話すかは悩むところではある。彼らにとっては知りたくない事実だろう。しかし一番義父母に関わる時間の長い私自身の精神衛生のため、さらりと、しかししっかりと、話しておきたいと思う。