高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族のあゆみ

高校生で起立性調節障害を発症した娘と家族の記録

角膜潰瘍その後

 角膜感染症とは、参天製薬が出しているパンフレットによると細菌やカビ(真菌)、ウイルスなどの病原体が角膜に感染し炎症を起こしている状態のこと。角膜の表面は比較的丈夫な構造をしており、さらに涙によって守られているので、ばい菌に触れただけで感染症になることは通常はない。しかし何らかの原因で異物が上皮を超えて角膜実質の中に入り込むと角膜感染症が起こる。ゴミ、砂、植物の枝葉による角膜外傷、コンタクト装用による角膜表面の傷、ドライアイ、ステロイド剤の長期点眼などが危険因子だという。角膜感染症には、細菌によるもの、真菌によるものと、角膜ヘルペス、そしてアカントアメーバ角膜炎というのがあるが、アメーバ角膜炎は想像を絶するほど痛みが強く難治性だそうだ。

 私の場合は、シェーグレン症候群の持病を持っていることで、ドライアイ症状が特に強く、角膜の表面は絶えず糸状角膜炎で、傷だらけ。そこにばい菌が入り込んだのだ。角膜潰瘍感染症)になったのは、今回で4回目。2016年に角膜ヘルペスを経験。この時は入院はしなかったが治療期間は果てしなく長く、痛みも強く角膜に穴の開く直前まで悪化して瞳に白い斑点ができたまま。2020年にはヘルペスの時とは違う方の目が細菌による感染症をおこし、2度入院治療を経験し、今回が3度目の入院になる。今回も過去2度と同じ細菌によるもので、同じヘルペスになったのとは違う方の目。主治医によると2020年の入院時に比べて、今回は病状が比較的に軽いとのことで、入院も前回に比べて短い2週間で済んだし、点滴による全身的治療はしなかったが、痛みは前回と変わらず非常に強く、退院してから10日ほど経つ今でも痛み止めなしには日常生活が困難で、悩ましいことに今回、視力はほとんど回復してきていない。

 

 病気になるのは、それが何の病気であれ、辛い。痛みのある病気は、特にしんどい。三大痛みといわれる尿管結石の痛みも、ずっと休みなくしくしくと続くリウマチの痛みも経験したが、目の痛みと言うのは何とも悩ましい。体を丸めて、痛みを防ぐ体制もとれず、何より見えないのは不自由だ。闘病中、痛みを紛らす読書ができない。テレビも映画も見られない。このまま視力が回復しなかったら、どうなるのだろうと湧いてくる恐怖。

 私が車を運転できなくなったら、お隣の義父母はますます不便になるし、車で1時間以上かかる場所に一人暮らしの母の力にもなりにくい。父母たちだけではなく自分たちの生活すら不便になるだろう。考え始めると悪いループに落ちていくようだ。

 

 こんな時、東京にいる娘みゆきから美味しい差し入れが送られてきた。私の大好きなNumber Sugarの特別においしいキャラメルのセット。”美味しいもので痛みが和らぎますように”のメッセージ。そして、ジャニーズの”Travis Japan”というグループがAmerica's God Talent というオーディション番組で勝ち進んでいるというニュースとともに、その番組の動画も紹介してくれた。

 

 若者たちが夢に向かって突き進んでいる動画を観たら、(正確には聴いたら)痛みで先を案じている自分が何だか小さく思えて来た。

 家族の誰かが苦しむよりも、今回痛い思いをしているのが自分で幸いだったと感謝しよう。みゆきが健康で仕事をできていることを心から喜ぼう。病気に打ちのめされ、やせ細り、生気のなかった彼女が、他者に思いを寄せる余裕ができたことに万歳しよう。